意味
キーワード:未来は走りながら考えろ!
白と黒のスフィンクスが牽く戦車に乗った1人の青年が描かれている。
後方に見える城から、今まさに飛び出してきたようだ。
彼の腰につけた金のベルトは傾いていることから、彼は準備をしている間もなく、
目的地に向かわねばならなくなったのであろう。
それでも、意気揚々としている彼の雰囲気は充分に伝わってくる。
また、見ようによって、彼はうっすらと微笑んでいるようにも感じる。
彼は目的地に着くまで止まることなく、後ろを振り返らずにひたすら前だけを見続けるだろう。
ウェイト版に描かれた彼の姿は20歳前後だろうか。
この時期は誰しも悩み多き年頃ではないだろうか?筆者もそうだった。
自分が分からず、自分の好きなモノすら分からず、勿論未来なんて考えると不安で不安で仕方がなかった。
それでも心のなかで行き場のないエネルギーが溢れていたように思う。
発達心理学者であるエリクソンの提唱する発達課題の分類の中で、彼の年齢は“青年期”という時期に当てはまる。
“青年期”の課題は“アイデンティティの確立”である。
「自分が一体何者であるのか」「自分はこれからどこを目指して歩いていくのか」を悩み、
「これが自分だ!」としっくりくる自分像を形作っていく時期である。
彼を運ぶ白と黒のスフィンクスは、そんな彼の精神的な葛藤の象徴であり、
戦車の手綱コントロールしながらも彼は悩み続けいている。
前進か後退か、追うべき理想か手堅い現実か。
本当は2頭のスフィンクスをコントロールできる自信など、彼にはないのかもしれない。
それでも、走り続けないといけない。
『戦車』のカードは正位置であれば「勝利」「困難に勝つ」など、良い意味に捉えられることが多い。
絵柄もその特徴を示しており、鎧の胸元につけた正方形の物体は、勝利や凱旋を表す。
しかし、両肩につけられた月が象徴するのは不安や弱気であり、彼の未熟さを感じさせる。
また、彼が自分自身をコントロールできなければ、2頭のスフィンクスは暴走し始め、
戦車は進むべき道から外れていくだろう。
ところで、以前紹介した『皇帝』のカードと『戦車』のカードは、ある意味で似ている。
『皇帝』も『戦車』の若者も、2人とも見えない未来に向かっている。
『皇帝』は恐れ知らずな態度でどんどん未来へと進むだろう。
それが『皇帝』の強さである。けれど、『戦車』の若者は不安を抱え、若さゆえの葛藤に苦しむ。
自分の弱さや未熟さを彼はしっかりと分っている。分かって躊躇することもあるだろう。
けれど、彼ならきっと未来に進んでくれるはずだ。
自分の弱さに向き合い、克服できた者ほどメンタルが強い者はいないのだ。
彼の持つ前向きな気持ちと少しでも前に進もうとする積極的な姿勢ある限り、彼の求める未来に辿りつく。
いつの日か彼は自らの弱さを克服し、人生の戦場に立つことになる。
その時はどうか彼が胸を張って未来に歩いていける“大人”になっているよう、祈りたいものだ。
正位置/逆位置
正位置:
挑戦、勝利、積極性、困難に打ち勝つ、前進、旅立ち、男らしさ、白黒はっきりつける、力強い、妥協しない、信念を貫く
逆位置:
敗北、悪い知らせ、うぬぼれ、友人とのケンカ、挫折、不注意、乱暴、はっきりと言い過ぎた結果、無責任で軽率な行動、行動と気持ちが一致していない、知識不足
恋愛
正位置:
ライバルに勝つ、障害を乗り越える、国際結婚、大胆、開拓心旺盛、積極的な態度が良い、迷わず信じて良い
逆位置:
ライバルに負ける、弱気、ケンカ、スムーズに進まない、一方的な気持ち、自分の気持ちを押し付けすぎている、自信を失っている
片思い
正位置:
積極的にアタックすると良い、難しく考えすぎている、積極的にアプローチしてくれる、期待していて良い
逆位置:
努力不足、弱気になりすぎている、周囲が見えなくなっている、ひとりよがり、友人に相談すると良い、若さゆえの失敗
相手の気持ち
正位置:
一途な人、大胆な人、早く関係を深めたい、自分がリードしたい、連絡を取りたい、好きで仕方ない
逆位置:
貴方に興味がない、気持ちが弱い人、積極的すぎて引く、落ち着いて欲しい、貴方の気持ちを受け止める自信がない、他に好きな相手がいる
仕事
正位置:
独立、積極的に取り組むと良い、先手必勝、フットワークが良い、旅行関係か外資系か吉、英語の成績が良くなる、とにかく行動することが重要
逆位置:
やる気がない、スランプ、伸び悩み、ライバルの登場、準備不足、判断ミス、周囲と上手くいかない、独裁的になる、軌道修正が必要になる
未来
正位置:
野望の達成、困難を乗り越える、力強く前進するのが良い、良いリーダーになれる、ポジティブな未来、自分の運命を信じること
逆位置:
燃えていた気持ちが冷める、夢が実現しない、関係がギクシャクする、自分自身のコントロールができない、ヒステリックになる、物事が失敗に終わる、気持ちが空振りに終わる
【この記事のライターさんをご紹介】
ROKUJO
Twitter:http://twitter.com/yurirokujo
昭和60年、栃木県生まれ。高校生の頃にタロット占いを独学で学び、学校の休み時間等で占いを行っていた。大学進学後も独学でタロットカードの由来等を研究する傍ら占いを続け、現在は都内某バーにて占いイベントを開催している。また、最近は本業であった公務員を退職し、ライター業と占いに専念している。